2018-12-03

シシノスミカ


霊山ボルダーランドから少し離れた場所にある、霊山ボルダーシーという非公開エリア。そこで一番大きな岩に走る一本のクラックを初登しました。それにまつわる、分かる人には分かるかもしれないお話です。




出だしから8mまではやや前傾したフィンガーからハンドサイズのクラックで、リップから上は3.5mのホールドのないノッペリとしたスラブ。

今から5~6年前にこの岩を見つけた時、ボルダーとして登るにはあまりに高いし、スラブに絶望的な雰囲気を感じたので、登る対象としてなかったのだけど、関西や東海のフリークライミングの重鎮達を招いた時に「これをオールナチュプロ&グラウンドアップで開拓したらきっと充実するよ」と教えられた。その頃、ナチュプロを持ってないどころか、ジャミングすらまともに出来なかった私には、あまりピンと来なかったが、それ以来ずっと心の片隅にあり、他のプロジェクトや、ボルターランド公開に関わる活動の傍ら、低い岩でジャミングの練習をしたり、コツコツとギアを買い揃えたり、ランナウトで力を発揮出来る精神面のトレーニングをしたりしながら、いつかは登ってやろうと夢見ていました。




そして今年に入ったある日、どうやらそれなりに準備が整ってきたかな?という絶妙なタイミングで、仙台のこれまたレジェンドな御方から、やってみないかとのお誘いを頂いた。
やはり、クライマーの端くれである以上、出会ってしまった以上、この岩を登らないという選択肢はないのだ。
そう、何か運命的なものを感じたのです。




このクラックを開拓するにあたって、そのスタイルをどうするか、様々な選択肢があり、どのスタイルにもそれなりに納得のいく理由があった。いっその事、トップロープでリハーサルを重ね、ボルダーとして登ってやろうと思った事もあった。でもそれは果たしてどうなんだろう。。。悩んだ末に出した結論は、やはりオールナチュプロによるリハーサル無しのグラウンドアップスタイルだった。自分はスポーツクライミングではなく、冒険的ロッククライミングがしてみたい。何よりそれが可能なチャンスなんて、滅多にあるわけじゃないもんね。




スラブに溜まった大量の松葉や土砂だけは、やむを得ずロープを使って掃除したのだけど、その時、痛恨のミスをやらかしてしまう。堆積した土と一緒にクラックの抜け口に生えていた木を切ってしまった。この木は、クラックの内部にゴミが入るのを防いでいたし、スリングをかけてナチュラルプロテクションとして利用できる、このルートにとって大切なアクセントだった。仕方なくノミなどを使って切り口を整えている時は、大変な嫌悪感だった。




トライした日数は2日間。初日は全然ダメ。気温が急に下がったのと、ナッツで墜落した経験がなかったので、体がこわばっていた。それに、この先にどんな困難が待っているか分からないっていうのは、言葉で理解するより何倍も恐ろしい。大滝フリーソロの経験もあるが、かなり勝手が違う。まずこの岩の粒の痛さとオーバーハングに慣れないと、とても冷静ではいられない。

2週間をおいて2日目は、ジムでムーヴ練習した甲斐もあってか、2便目には嫌がる体を無理やり奮わせながら核心を越えてプロテクションをセットできた。3便目は余裕で核心を越え、あわやトップアウトというところまで行くも、スタンスが欠けてフォール。ナッツからカムに変えといて良かった。次第にギャラリーが集まってきたので、これ以上カッコ悪いところは見せられんと、気合いの4便目、何だかホールドがヌメっていたが、気にせずムーヴを起こす。やはり一度経験するってのは大きい。
前便から上部はもう落ちたくない一心で必死にジャムをねじ込み、カムを決め、ボルダリングみたいな登り方でガツガツとトップアウトした時にはもう、腕の感覚が全く無くなるほどボロボロになっていた。リップの上にはかなり深いガバクラックがあるので、そこで充分に休み、2歩のスラブをこなす。掴めるホールドは無いが、おそらく普通に低い位置にあれば5~6級、まず落ちる事はないと分かってはいても、やはり怖かった。




登り終えて、この登攀を自分なりにどう評価するかだけど

ルート名『シシノスミカ』
ルートとしてさほどスケール感はないが、これほど奇麗で純粋なクラックは、近場にはない。

それだけいいと思う。

グレードは全然分からないが、予想よりかなり易しめで、何となく5.11台なのかな・・・あとで登った人が決めちゃって良いと思います。(感想を聞かせてもらえたら嬉しいです) 登るスタイルについても、自分がそうしたかったというだけで、他人に押し付けるつもりは全くありません。ボルトを打ったり岩を傷つけたりしないなら、トップロープでも何でもお好きなように登って楽しんでください。

もし「オススメは?」と聞かれたら
「やっぱグラウンドアップっしょ!」って言うだろうけどねw

もし興味ある人は、私か霊山に詳しいローカルクライマーに連絡してください。
霊山ボルダーシーは、なかなかに急峻な地形なので、怪我人の増加による公開エリアへの影響を防ぐため、一般には非公開エリアとなっています。が、分かる人には是非登ってもらいたいという思いもあるので、こちらの都合がつく限りではありますが、ご案内したいと思います。ランド以上にクオリティの高いボルダー課題もたくさんありますよ。




最後に、このクラックに光を与えてくれた関西や東海の重鎮方、怪我を押してビレイを買って出てたくれたSさん、一便ごとにギアを回収してくれてVIP待遇で登らせてくれた仙台のレジェンドな御方、その他応援してくれた全ての皆様に感謝いたします。



0 件のコメント:

コメントを投稿