2022-03-11

人狼完登

 


人狼が登れてしまった。近頃リードメインでやってたおかげか、指の痛みがなくなり、調子良さそうなので、久しぶりにちょっとやってみようかなーと軽い気持ちで。するとなぜか下部のムーヴが安定して、ワンチャンあるかも?という気配だったので、そこからは通いまくりました。正直登れるとは思ってなかったので、とてもうれしすなお話です。

人狼の岩は丸森のとあるエリアにあり、登られたのは2005年、今から17年ほど前になる。自分がボルダリングを始める前の話なので、あくまで人伝だが、室井登喜男と大西良治のセッションにより室井氏が初登、グレードは三段とされたが、これは初登者の見解ではなく、見ていた人の独断であったと。当時は三段といえば一般クライマーには夢のようなグレードであった為、それでよかったと思うし、自分が初めて紹介された時は、離陸さえままならなかったので疑いもしなかった。


人狼を知るクライマーは多くないが、昔から強者たちが挑み続けてきた。

東北ツアーの初日に人狼を案内し、指皮をズタズタに痛めつけるというのが、ここらの習わしというか、歓迎の儀式になっていた。再登者の情報について全てを知っているわけではないが、知る限りでは左カンテに抜けるラインで登れた人が一人いるだけ。オリジナルの直上ラインは17年間誰にも登られず今に至る。自分は頻繁に通った年もあれば、そうでもない年も。とにかく初手から指に悪いので、まともにトライできる回数が少なく、結果クライミング能力が下がってしまう印象だった。それでも、いつの日か登りたい目標である事は間違いない、抜群にカッコイイ岩だ。

まるで桃を半分に割ったような形をしており、しかもそれは人為的なものではなく、あくまで自然にそのように割れている。不思議なのは、割れた片割れがどこにも見当たらない事。おそらく数百トンにはなるだろう.その片割れが一体どこに行ったかは、いまだに謎である。ちなみにこの岩は、祀られてはいないがオオカミ信仰の対象とされ、旅人の安全を守る山の神の使いである狼が住むとされている。人狼という名前を付けた室井氏は当然そのことを知る由もなく、この話を住民の方から聞いた時は、奇跡的な偶然に大変驚いた記憶がある。


人狼エリアは人里に近く、自宅から車で20分。子供の頃から父親とよく釣りに訪れていた。毎年春には地区の清掃活動が行われ、そこに福島と宮城のローカルクライマーが参加して友好関係を築いてきた。自分もボルダリングを始めてからは毎年のように参加し、一昨年の水害の際には、土嚢袋やブルーシートなどを寄付しつつ、応急復旧作業を手伝った。地区の住民は皆いい人で、仕事で繋がりのある人もいる。自分にとっては庭のような身近な遊び場って感じなので、たぶんこれからも一生付き合っていくのだろうと思う。



さて、肝心の完登エピソードなのだが、あまり詳しく書くと野暮だし後味が悪くなるので簡単に。初登時より下地がかなり削れて下がっているので、オリジナルより右手を一手下げてスタートした。マットは重ねない。「そんな事までして登って悔しくはないのか?」と、いつかのロクスノ記事を読んで以来、それが室井氏の課題を登る時の自分なりのこだわり。

上部の細かいのを色々触っているうちに、いくつかのホールドが欠けてしまい、想定していたスタティックなムーヴが出来なくなった。左カンテを使うムーヴは一定の高度まで達すると確かに合理性が生まれるが、ラインが変わるしそこは最初から想定していないので、最終的には右手でリップまでランジをキメました。これも只のこだわりなので、登った人の判断で良いかと思う。

グレードについては、もはや長い付き合い過ぎて分からない。

どうやら三段ではない気はするが、四段以上を提唱できるほどの実績がないし、それこそスタートや、使うホールド、ラインによって変わるのかもしれない。そもそも、この岩を登りに来るような連中は、グレードなんかに執着がないと思うので、曖昧なぐらいが丁度良いのかなと思う。

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