2022-11-23

依々恋々(いいれんれん)

 


依々恋々 E7/6c (5.12RX) 

ようやく登れました。岩のサイズはちょうど10m、リードするにはちょっと物足りないけど、ボルダーでは高過ぎて手が出ない厄介なやつです。とりつきから全体的に被っていて上部は120°もあり、東北地方の花崗岩としてはかなりの傾斜だと思います。

はじめはボルダーとしてグラドアップでトライしていました。しかし、一見ポジティブなホールドはあるものの、それが果たして安定してるのか分からない。しかも間隔が遠く、うっかりすると戻れない高さに達してしまうし、上部は絶望的に悪そう。ちなみにランディングは結構な段差で、落ちたらかなりヤバイ。

どうすべきか考えた末に、7m地点にある、唯一プロテクションがとれそうなフレークまで行ってみることにした。岩の上に支点となるような木などがなく、トップロープを張るのもなかなか厄介だった。手持ちのカムやナッツに加え、新たに購入したボールナッツを携え、ユマーリングで上まで登って行ったが、壁が猛烈に被っている為、なかなかフレークを掴むことが出来ない。どうにか片手でフレークを掴み、様々なプロテクションを試すが全然決まらず四苦八苦した。かろうじて紫色のナッツがフレークにかかり、体を壁に引き寄せる事に成功。しかし、期待した場所はフレアして奥が閉じており、些細な振動で簡単に外れてしまうので、どう考えてもこれをプロテクションとするのは危険過ぎた。

今度こそ絶望して諦めかけたが、間違いなくワールドクラスなカッコイイ岩だけに、未練たらたら。。。だいぶ時間をかけてギアをガチャガチャやってるうちに、なんとキャメロットz4の最小サイズ#00が入った。100%決まっているかどうかは怪しいが、とりあえず静荷重なら問題ない様子。さらにバックアップとして、スリングをフレーク先端から走る幅3mmほどの割れ目に引っ掛ける事で、少し安心感を得ることが出来た。

地上からフレークまでは約7m。残り3mなので、ギリギリだが、計算上はトップから落ちてもグランドフォールしない事になる。プロテクションがもてばの話だけど。私の感覚では、墜落してz4が機能する確率は60〜70%、もし外れても、それがクッションとなり、おそらく一回限りだがバックアップのスリングが切れずに残るだろう。ただし、フレークが大きな衝撃を受けた場合、それごと崩壊する可能性があり、その場合はグランドフォール、そしてルートそのものが消滅する事になるかもしれない。その確率は、わからないとしか言えない。

グランドアップで開拓したかったという気持ちはありましたが、様々な事を考慮し、結局自分はトップロープでリハーサルして、フレークに負担をかけないように一発でRPするという決断をしました。一回でも落ちてしまったら諦めよう。

スタートは下の岩の上に立ち、目の前のしっかりしたカチから、7mのフレークを目指し、プロテクションを決めたら右のカンテを使いながら岩の頂点を目指す。マントルを反した後にちょっとだけ悪いスラブがあります。途中で迷うような派生はなく、顕著なホールドを追って行けば自然とそうなると思います。まさに最も魅せられるラインが唯一の登れるラインで完璧&最高です。(ボルトを打てばより安全により高難度なルートを作る事は可能でしょうけど) 

途中に浮いているホールドがありますが、極力自然のまま登りたかったので敢えて撤去していません。もし下部で苦戦するようなら止めておいた方が得策でしょう。これ以上詳しく書くと、オンサイトの邪魔になるので自粛しますが、最後の最後まで油断できないエキサイティングな内容で、個人的には、仮にボルトルートであっても☆☆☆が付くのではないかと思っています。

グレードは暫定ですが、トラッドの本場 英国式のEグレードを採用してみました。とはいえ、私自身は本場のトラッドの経験が全くなく、あくまでも想像で考えたものに過ぎません。そしてEグレードはオンサイトを前提としています。なのに何故Eグレード?と思われるかもしれませんが、それは、単純に自分の感覚をアウトプットしたいという欲求 (表現の自由) と、これをきっかけにトラッドクライミングに興味を持ち、一緒に知識を深めてくれる人が現れる事を期待するからです。

トラッドやEグレードは、日本国内で認知されているよりも、ずっと客観的で平等な条件に基づく考え方であり、もっと理解されるべきというのが私の考えですが、その話はとりあえず置いておいて、あくまでも暫定というのが大事な部分です。

元々私はグレードに対して何の執着もありませんし、一般的な公開エリアで登る事自体が稀なのでグレード感覚が世間と乖離しているという自覚があります。なので、積極的に再登者の意見を聞いて勉強し、いくらでも改訂したいと考えています。今の状態で下手に場所を公開すると事故が起きて地域住民に迷惑をかけるので、とりあえず今のところ場所は非公開ですが、興味がある方は、メールやコメントやSNS等でご連絡いただければご案内します。

本場のトラッドに詳しい人が来てくれれば、それに越した事はないですが、一緒に考えてくれる気持ちがあれば経験がない人でも構いません。有識者の意見だけで物事を推し進めても、必ずしも向き合うべき問題解決への近道とは思えないので。

※※※

ちなみにルート名の 依々恋々(いいれんれん) とは、恋慕うあまり離れるに忍びない様。このルートに対する自分の気持ちと、このエリアに伝わる伝説の物語にちなんで名付けました。

最後に、パートナーには多大なる心労をかけて申し訳なかったです。

本当にありがとうございました。

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